パイロットのスケジュールは、国内線を飛行する場合と国際線を飛行する場合で大きく異なります。
パイロットを目指す方々は、パイロットがどのような勤務スケジュールで働くのか把握しておくと、より仕事のイメージが掴めます。
本記事では、パイロットのスケジュールがどのような形で計画され、調整がされるのかを現役機長の空おじが詳しく解説します。
パイロットのスケジュール:国内線
国内線に限定したスケジュールでは、月間非常に多くの便を飛ばすことになります。
国内線を中心としたパイロットのスケジュールについて、解説します。
一日に何時間働く?何回飛ぶ?
会社により路線は様々ですが、一日あたり羽田-高知などの四国行きや、もしくは羽田-千歳や羽田-青森などの短い路線の場合は、一日に2便から4便がスケジュールされます。
つまり1往復から2往復をするということで、2往復した場合の勤務時間は準備も含めて10時間程度となります。
なお、奄美大島から徳之島など、極端に短い路線を飛行する航空会社の場合は、一日に6便を飛ぶスケジュールもあります。
また、羽田-福岡や羽田-那覇などの比較的長い路線の場合は、一日に基本的に2便から3便となります。
九州路線の場合は、四国便も交えて一日に4便となる場合もあります。
3便で勤務を終える場合は目的地でステイします。
就航先が多い会社ほど、ステイする場所が増えるので現地の食べ物を満喫できて楽しみも増えますね!
月間に飛行する便数と日数
月間で見ると、国内線のみのスケジュールであればトータル40便-60便ほどとなります。
離島を中心とした超短距離路線を中心とした会社の場合は、月間90便程度スケジュールされる場合もあります。
なお、勤務日数は月間17日ほどになります。
パイロットのスケジュール:国際線
国際線を中心とした会社の場合飛行時間が長い分、便数は国内線に比べてだいぶ少なくなります。
ここでは国際線を中心としたパイロットのスケジュールについて、解説します。
一日に飛行する便数
羽田-台北や、羽田-上海など、飛行時間4時間程度の近距離の国際線は2便、それよりも遠い長距離の国際線は1便を飛行して、現地でのステイとなります。
ニューヨークやヨーロッパ路線など、13時間程度かかるような国際線の場合は、1便を飛行した後に少なくとも到着地で36時間程度のステイが取られます。
※なお、ステイというのはその場所に宿泊するという意味で使います。
月間に飛行する便数と日数
長距離を中心とする会社ならば月間10便、近距離の国際線も飛行する会社ならば月間20便前後となります。
乗務日数は、国内線よりも休息を長く取らなければならない関係上、フライトがスケジュールされるのは月間10日程度となります。
ステイ先でどのくらい休憩できるのかは会社によって様々です。
日本は乗員不足から、徐々に休憩時間が短くなってより高稼働となってきています。
中国や台湾の航空会社では、パリやロサンゼルスの場合は現地に二泊や三泊する場合もあります。
パイロットの1日のスケジュール
パイロットは飛行中以外にも様々な準備や、フライト後の報告などに時間をかける必要があります。
ここでは国内線の朝8時発、羽田-千歳を二往復する場合のパイロットの一日のスケジュールをご紹介します。
出社前
出発時刻の1時間前に出社する必要があるため、出発時刻の3時間前に起床します。
朝食を取りながら飛行の準備を開始します。
機長は出発前の準備で必要な準備が航空法で定められており、副操縦士もそれに準じて準備を実施します。
以下の書類をIPADで朝食を取りながら30分ほどで確認します。
その確認が終了次第、空港に向かいます。
航空機の整備状況
航空機の整備状況ですが、飛行機は常に全く壊れていない訳ではありません。
ある程度軽度であれば故障したまま飛行することもあります。
その際には故障の際の運用手順や注意事項などがマニュアルに記載されており、その内容に沿って運航する必要があるため整備状況の確認は欠かせません。
気象
気象は搭載する燃料を決定したり、シートベルトサインの運用を決定するにあたって必要な要素です。
地上天気図や高層天気図、各空港毎の天気をしっかりと確認して、今日の運航路線の天気のイメージをざっくりと掴みます。
航空情報
飛行のルールの一部変更や滑走路の閉鎖情報など、一時的に変更になっている事項が羅列されているのでその内容を確認します。
飛行計画の確認
飛行計画というのは、その日のフライトの経路や高度や進路更には燃料など、一目でどういうフライトをするかがわかるように記載されています。
この内容が妥当かどうか、気象情報や航空情報その他の要素を考えて、機長は必ず確認しなければなりません。
出社後
出発時刻一時間前までに、機長、副操縦士と客室乗務員がオフィスに揃います。
そこで、副操縦士とのブリーフィングを行います。
副操縦士とのブリーフィングは、出社前に行った確認事項の認識の照らし合わせです。
お互いの認識に漏れがないか、どのような運航を行うか、気をつけるべき点は何か、機長が主導しながら話し合いを実施します。
話し合いが完了したら運航管理者と話し合い、飛行計画にサインをします。
その後、客室乗務員とブリーフィングを行い、本日の機材の状況やベルトの運用、天候情報、その他気をつけることを客室乗務員と共有します。
出社後ここまでを15分程度で行う必要があります。
その後、保安検査を通過して使用する飛行機へと向かいます。
フライト中
出発予定時刻の40分前くらいに使用する飛行機に到着します。
使用する飛行機に到着後、整備士と対面して飛行機の不具合箇所などの説明を受けます。
その後飛行機が飛行に当たって問題ないことを確認しつつ、必要な書類が搭載されていることを確認します。
その後、操縦業務を担当するパイロットと、管制とのやりとりを担当するパイロットで出発準備の業務が変わります。
それぞれがマニュアルに定められた出発前の準備を行いながら、お客様の搭乗が開始されます。
一通り準備が終わったところで、実際に搭載された燃料や重量などの確認、更には出発前のブリーフィングを実施して、準備ができたら飛行機が出発となります。
着陸後
次の便がある場合には、次の便の出発までの45分くらいを使用して再び準備事項で変更点がないかを確認しながら、出発準備を行います。
もしも次の便がないのであれば、揺れや天候の情報を運航管理者に報告して、飛行機から出ます。
飛行機から出てお客様と同様の動線で空港を出て、解散となります。
パイロットは定刻に到着すれば基本的に残業はありません。
一部何か特別なことが発生した場合、機長は報告書を書く義務がありますが、その時を除いてすぐに帰れるのがいい点ですね!
パイロットのスケジュールはどうやって決まる?
入社した会社がどのような路線を飛んでいるか次第で、パイロットのスケジュールは全く異なります。
日本のほとんどの航空会社では、国際線と国内線を混ぜ合わせたスケジュールが発行されます。
日本においてはパイロットが勤務していい上限時間が国によって定められているため、その上限を超えないように担当部署が毎月決定しています。
上限の決まりはいくつかあるのですが、一番わかりやすいのは毎月100時間を超える乗務をする事はできません。
例えば、成田からニューヨークは13時間かかりますので、月間4往復もしたら100時間を超えてしまうのです。
つまり国際線の会社では毎月スケジュールされる便数が少なく、国内線の会社では便数が多い理由はここにあります。
なお、国内線と国際線、どっちがいいかは本当に人によって様々です。
国内線のが便数が多い分、月の拘束時間が長くなります。
また、国内線は基本的に機長と副操縦士二人で飛ぶことになります。
一方、国際線は休憩をとるための交代要員のパイロットがいる他、拘束時間も国内線のみの勤務に比べると短いです。
ただし時差や徹夜が多くなるため体力的な負担が非常に大きいです。
個人的には、体力があれば国際線のスケジュールのほうが楽と感じます。
パイロットの休暇はどのくらい?
パイロットの休みは多いと思われる方も多いのではないでしょうか?
月間ですが、会社の規定により公休が10日間付与される会社が殆どです。
それに加えてスタンバイと呼ばれる勤務が3日程度スケジュールされます。
スタンバイが呼ばれなければ、実質毎月休みが13日程度あるような勤務となります。
スタンバイは自宅スタンバイと、会社スタンバイがあり、いつでも連絡を受けて飛行できるように準備しておかなければなりません。
スタンバイ時間に音信不通だと、会社によりますが減給などのペナルティがあり、純粋な休みとは言えないかもしれません。
有給に関しては会社ごとに多く異なり、年間12日程度の会社から多いところでは40日程度付与される会社もあります。
日本では基本的に有給は少なく、海外の航空会社だと40日程度の付与がある場合も多くあります。
パイロットのスケジュール!国内線と国際線の勤務と大変なのはどっち?まとめ
パイロットの国内線、国際線のスケジュールについてお伝えしました。
- 国内線は路線の距離次第で、2便から6便程度一日にスケジュールされる。
- 国際線は1便から2便スケジュールされる。
- 月のスケジュールは国内線のみの場合40便から60便、国際線のみの場合10便から20便である。
- どっちが楽かは徹夜や時差に耐え切れるかによる。
パイロットのスケジュールは航空業界の需要に大きく左右されます。
繁忙期には非常に忙しく、逆にコロナ期間は仕事が月に2日しかないような時も沢山ありました。
今後の航空業界の発達によって、より需要が増えた場合には更にパイロットのスケジュールが忙しくなる時代も来るかもしれません。