パイロットを目指すにあたって、パイロットの養成学校に入学する時、ライセンス取得後航空会社に入社するときなど、志望動機を問われる機会があります。
その時にどういった答えを相手が望んでいるのか、またどういった答えが好印象なのかよくわからない人も多いでしょう。
かつて私、現役機長の空おじも、本音ではある程度パイロットになりたい理由はあったものの、履歴書や面接でふさわしい答えに迷った記憶があります。
機長の目線も踏まえ、どのような志望動機が適切か解説します。
パイロットの志望動機で会社が求めるものとは
まず大前提として、パイロットを採用するにあたり志望動機はあまり重視されません。
その理由として、熱い志望動機だけではどうしようもない適正という部分がどうしてもパイロットには存在してしまうからです。
そのために志望動機を考える上で一番のポイントは、常識の範囲内で目立つようなことを書かない、言わないという事です。
かつ、ある程度本音で書いて説明ができる内容にしておくのがいいでしょう。
航空業界を選んだ理由
この質問はあまりされません。
理由としてはパイロットを目指す人が面接に来る理由は、パイロットになりたいからであり、航空業界に入りたいからではないと聞く方もわかっているからです。
ですが、万が一聞かれた時のために面接に備えてある程度本音の志望動機を用意しておいてもいいかもしれません。
- 航空業界は人と人を繋げる機会を提供するやりがいのある業界だから。
- 飛行機が好きな子供時代で、学生時代もずっと憧れを持っていた。
など、本音で無難な志望動機を準備しておきましょう。
パイロットを選んだ理由
この質問は、必ずされる質問です。
ですがここでチェックされるのは、内容ではありません。
- その人が主張が強すぎる人ではないか?
- 変わった人ではないか?
- 答えた内容に対する質問に、ちゃんとキャッチボールをしてくれるか?
という観点です。
パイロットは訓練中から実際にパイロットになった時まで、集団で動かなければなりません。
その為あまりに個性的な人や、自己主張が強い人、会話のキャッチボールが苦手な人はこの質問を通じて違和感を持たれてしまうかもしれません。
貴社を選んだ理由
この質問も、頻繁にされる質問です。
パイロットの面接官はここに何を答えるかは何も気にしていないと思いますが、人事部から来る人は気にするでしょう。
なのでこの質問に対する答えは真剣に考える必要があります。
パイロット、または自分の経験とその会社を結びつける必要があります。
よく聞かれる、「パイロットとして◯◯会社を志望する、志望動機の解答例」を紹介します。
パイロット志望動機の解答例
良い例
私は大学のゼミで沢山の外国人の人に会い、考え方や文化の違いなどから沢山の刺激を受けています。
そのような国境を跨いだ人々の交流を繋ぎ、人々に出会いの機会や様々な絆を与える飛行機の操縦は、非常にやりがいのある仕事だと考えています。
貴社は大型機や多くの国際線を昔から飛行しており、今後も航空需要の拡大に合わせてよりその社会的な必要性が増していくと想像しています。
私は貴社において、飛行機の操縦を通じて世界中の沢山の人々の繋がりに貢献したいと考えています。

一般的な内容で、聞いてる方も特に突っ込みようがありません。
このような無難な答えが理想的です。
貴社に入社後は、◯◯市に居住する予定ですが、そこに強く根付いている会社であるからこそより身近に、その都市に住む皆様の地元の航空会社への想いを聞く機会も多くなるかと想像しています。
私はパイロットとして、最大限お客様に寄り添い、お客様の気持ちに立った操縦をしたいと思っています。
◯◯市で人との繋がりを大切にし、様々な飛行機への想いのこもった声を聞き、自ら考えて日々のフライトに反映し、より質の高いフライトを提供できる操縦士になりたいと考えています。

少しひねっていますが、コミュニケーションを積極的に行いフライトにも真剣であると感じることができます。
この場合は本気かどうかを図る為ある程度、内容に対して更に質問があるかもしれません。
特に貴社では、地方空港を中心に飛行していることから、ビジュアルアプローチや有視界飛行方式を行う機会も大型機に比べると多いと想像します。
もちろん時代の流れと共にそのような方式は今後減っていくものと想像しますが、パイロット経験の浅いうちからそのような進入方式を多く経験できる事は、私の今後の経験の大きな糧になると想像しています。

非常にパイロットらしい答えです。
知識と操縦技量へのひたむきさが感じられると思います。
悪い例
しかし何とか現状を打破したい思いで勉強を頑張ってきました。
パイロットは勉強や試験が多いですが、他職種に比べると高い給料を貰えると思っています。
勿論、私自身必要な努力を惜しむ気はありませんし、会社に可能な限りの貢献をしていくつもりです。
貴社では他社に比べ給料も安定していることから、貧乏ながらも支えてくれた両親に恩返しをしていきたいです。

正直な気持ちかもしれませんが、志望動機では給料のことを持ち出すのはあまり適切とは言えません。
そういった社会通念を踏まえない回答は、不要に目立ってしまう可能性があります。
子供の頃の私は飛行機のことにしか頭にないと言っていいほどで、貴社の垂直尾翼の流線の美しさを絵に描いていたほどです。
また貴社の飛行機においてはRNP ARをかなり早い段階から導入し、私自身その憧れの進入方式を実施する為に、家の自作シミュレーターを活用して日々練習しています。
最先端の進入方式に敏感な貴社であれば、操縦士として最先端の技術に触れる機会が与えられ、美しい垂直尾翼の流線を背にフライトできる事は、何事にも変えられない喜びであると想像しています。

あまりにもマニアックで、面接をしている側としては怖いです。
どこまで本当かもよくわかりません。
俗に言う飛行機オタクは、パイロットの世界にはあまりいません。
書く際のポイント
志望動機を書く際に意識する事は
- 志望動機は減点されなければいいので、変に目立とうとしない。
- 読んでいる人が志望動機をスッキリ納得できる内容にする。
- 読んでいる人が疑問に思うことを想定し、事前に答えを備えておく。
ということを意識してみて下さい。
エアラインパイロットになった後の試験も、質問を想定して答えをある程度準備しつつ、相手の意図や雰囲気を汲んで必要に応じて解答する機会は多くあります。
その練習だと思ってください。
パイロットとして求められる適性
操縦技術以外のところで言えば、人との真摯なコミュニケーション能力です。
「必要な情報に対して、正しい量を正確に伝える」ということ、そして「相手の言っていることを、事実ベースで理解する」ということができないと難しいです。
逆にわかったふり、知っているふりをする人は最悪です。
志望動機のやり取りの中でも、わかったふりは絶対にしてはいけません。
わからないことを、「わからない」と言えるくらいまで自分の頭を整理して、しかし全てがわからないのではなくしっかりと積み重ねたものを持っていて、その上で正確にコミュニケーションができるかを求められます。
パイロットして求められる人物像
飛行機オタクではなく、人並みに勉強をして、人並みに普通に遊んで、自分の生き方を受け入れてる人が求められます。
機長になると個性が様々になってくるのですが、副操縦士においては副操縦士らしい人、というのが存在します。
それが上記のように特別に何かが秀でてるわけではないのですが、かと言って不要に他人を見下したり悪目立ちもしない本当に普通の人です。

一匹狼で、他人よりも自分が優秀であることに生きがいを見出している人は、仮に本当にとてつもなく優秀であってもパイロットにはなりにくいでしょう。
私の周りでもそのような人は軒並み脱落していきました。
まとめ
パイロットを目指す上での志望動機とその例文について解説しました。
- パイロットを目指す理由、その会社を選んだ理由は頻繁に聞かれる。
- 無難な答えが正解であり、不要に目立つ必要性は一切ない。
- マニアックな方向性や、給料に観点を置くのは望ましくない。
パイロットの志望動機は人によって様々かと思います。
本当に動機となる過去の印象的な出来事や思い出があるようでしたら、そちらも是非面接でアピールしてみてください。