飛行機の操縦に必要な免許!パイロットは何の資格を持って飛行している?

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飛行機を操縦するためには、複数の免許を取得する必要があります。

またそれぞれの免許において、操縦の際にできることが決められています。

その決まりは航空法において決められていますが、非常にわかりにくく専門的です。

ここでは飛行機の操縦のために必要な免許について、全く素人の方にも理解できるように、現役機長の空おじが解説します。

操縦のために必要な免許

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飛行機の操縦の免許は、自家用操縦士、事業用操縦士、定期運送用操縦士の三段階に分かれています。

この記事ではわかりやすく「免許」と解説しますが、自動車免許と異なり「技能証明」と私たちは呼んでいます。

上位資格を取ることで、できることが増えていくイメージです。

専門的に解説すると、航空法で飛行機の操縦は免許を取得しない限り一切禁止されていますが、それぞれの免許を取得することでその制限が徐々になくなるというものになっています。

自家用操縦士

自家用操縦士

航空機に乗り組んで、報酬を受けないで、無償の運航を行う航空機の操縦を行うこと。

出典:e-Govポータル

自家用操縦士は最初に取得する免許です。

この免許で出来ることとしては、「報酬」つまりお金を一切もらわずに、「無償の運航」つまり商売をしていない飛行機の操縦を行うことができます。

農薬散布や、家族を乗せての遊覧飛行ができるということです。

移動する為に、車代わりの移動手段としての飛行機の操縦もできます。

一方友人からお金を貰って飛行したり、何か事業を行っている飛行機の操縦を行なうことは、仮に給料を貰わないとしてもできません。

期間としては、2〜3ヶ月で取得できます。

また飛行機の自家用操縦士を取得したからといって、ヘリコプターの操縦はできません。

飛行機は飛行機の自家用操縦士免許、ヘリコプターはヘリコプターの免許、滑空機や飛行船も同様にそれぞれの免許を取得する必要があります。

難易度に関しましては、飛行機の免許の中では比較的易しいものとなります。

事業用操縦士

事業用操縦士

航空機に乗り組んで次に掲げる行為を行うこと。
一 自家用操縦士の資格を有する者が行うことができる行為
二 報酬を受けて、無償の運航を行う航空機の操縦を行うこと。
三 航空機使用事業の用に供する航空機の操縦を行うこと。
四 機長以外の操縦者として航空運送事業の用に供する航空機の操縦を行うこと。
五 機長として、航空運送事業の用に供する航空機であつて、構造上、一人の操縦者で操縦することができるもの(特定の方法又は方式により飛行する場合に限りその操縦のために二人を要する航空機にあつては、当該特定の方法又は方式により飛行する航空機を除く。)の操縦を行うこと。

出典:e-Govポータル

いきなり難しくなりましたね・・・。

この資格から、お金を貰って操縦を行うプロの免許となります。

この免許の取得にはおよそ2年程度かかります。

この免許でできる操縦は分かりやすく言えば、「エアラインなどで使用する大きな飛行機における副操縦士としての操縦」または「小さな飛行機における機長としての操縦」です。

自家用操縦士で操縦できる範囲もできますが、通常自家用操縦士を取得した後にこの免許を取得します。

事業用操縦士までは、就職までに航空大学校や大学養成の訓練コースなど、自社養成以外の多くの方が費用をかけて取得します。

なお、この免許でやってはダメなことをわかりやすく挙げると・・・

1万円くれれば僕の飛行機で北海道まで連れて行ってあげるよ〜。

これは報酬を受けているので「二 報酬を受けて、無償の運航を行う航空機の操縦を行うこと。」に引っかかり行うことができません。

事業用操縦士をゲットしたぞ!

これでボーイング、エアバスを操縦し放題だ!

これもできません。

機長と副操縦士が二人で飛ばす飛行機は、飛行機の「型式証明」というものを事業用操縦士に加えて取得しなければなりません。

それはボーイング777の機体を飛ばす人が、その操縦知識をしっかり持っていますよ、という証明になります。

「事業用操縦士」と「型式証明」の二つを合わせて副操縦士のデビューを迎えます。

定期運送用操縦士

定期運送用操縦士

航空機に乗り組んで次に掲げる行為を行うこと。
一 事業用操縦士の資格を有する者が行うことができる行為
二 機長として、航空運送事業の用に供する航空機であつて、構造上、その操縦のために二人を要するものの操縦を行うこと。
三 機長として、航空運送事業の用に供する航空機であつて、特定の方法又は方式により飛行する場合に限りその操縦のために二人を要するもの(当該特定の方法又は方式により飛行する航空機に限る。)の操縦を行うこと。

出典:e-Govポータル

技能証明の中では、パイロットが取得を目指す中でも最難関の資格となります。

この資格を取得する人は、エアラインで機長として飛行する人です。

この資格取得は年齢要件や経験要件を満たしていれば2-3年ほどでも取得ができるのですが、この免許取得のための訓練をスタートするための社内の要件を満たす必要があります。

その為会社により10年から15年程度かかるのが一般的です。

なお、エアラインの機長は一般的には大きな飛行機を操縦します。

エアラインの機長で、もしも飛行する飛行機が小型機なら必要ないのですが、国内で使用される殆どの飛行機では、定期運送用操縦士に加えて後程解説します「機長認定」が必要です。

准定期運送用操縦士

准定期運送用操縦士

航空機に乗り組んで次に掲げる行為を行うこと。
一 機長以外の操縦者として、構造上、その操縦のために二人を要する航空機の操縦を行うこと。
二 機長以外の操縦者として、特定の方法又は方式により飛行する場合に限りその操縦のために二人を要する航空機であつて当該特定の方法又は方式により飛行するものの操縦を行うこと。

出典:e-Govポータル

この免許は、2013年に新設された比較的新しいものです。

全日空と日本航空の自社養成で入社した場合のみ取得する免許となります。

上記で解説した、自家用操縦士と事業用操縦士は取得せず、エアラインの副操縦士として飛行する為のみに取得します。

その為、訓練は自家用操縦士と事業用操縦士を取得するよりも短く済みます。

その一方、趣味で飛行機の操縦はできませんし、定期運送用操縦士を取得するまで、准定期運送用操縦士の採用がない現状では他社へのパイロットとしての転職もできません。

その他の目的で必要な免許

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飛行機の操縦は、技能証明を取る必要があるのは勿論、他にもいくつか取得するべき免許があります。

こちらも正式には航空無線通信士を除き、「免許」という名前ではありません。

それぞれが状況によって必須となっています。

計器飛行証明

航空法 第三十四条
定期運送用操縦士若しくは准定期運送用操縦士の資格についての技能証明(当該技能証明について限定をされた航空機の種類が国土交通省令で定める航空機の種類であるものに限る。)又は事業用操縦士若しくは自家用操縦士の資格についての技能証明を有する者は、その使用する航空機の種類に係る次に掲げる飛行(以下「計器飛行等」という。)の技能について国土交通大臣の行う計器飛行証明を受けていなければ、計器飛行等を行つてはならない。

一 計器飛行
二 計器飛行以外の航空機の位置及び針路の測定を計器にのみ依存して行う飛行(以下「計器航法による飛行」という。)で国土交通省令で定める距離又は時間を超えて行うもの
三 計器飛行方式による飛行

出典:e-Govポータル

わかりやすく言えばこの免許(正式には証明書)を取得しない限り、天気の良い状況でしか飛行することができません。

しかし計器飛行証明を取得した場合には、雲の中を飛行したり霧の中でも着陸をすることができるようになります。

趣味で飛行機を飛行する方では、計器飛行証明を有している人はあまりいないかもしれません。

しかしエアラインのパイロットで計器飛行証明を持っていない人はいません。

取得は事業用操縦士の訓練の中で3ヶ月程度かけて実施されます。

空おじ機長
空おじ機長

機長になると、定期運送用操縦士が計器飛行証明を兼ねるため、技能証明を受け取る代わりに計器飛行証明は返却します。

副操縦士の間長らくお世話になった証明書ですので、寂しいものがあります・・・。

航空身体検査証明

飛行機を操縦するにあたって、急に意識を失って墜落したりしないようにする為に、健康である証明をしなければなりません。

自家用操縦士では第二種、それ以上の上位の免許においては第一種の身体検査証明が求められます。

第一種に比べ自家用操縦士の第二種では若干条件が緩和されており、プロのパイロットが取得する第一種の方が条件が厳しいものとなっています。

ただし、若いうちには不摂生をしない限り実際には9割以上の人が合格するものとなっています。

ただし一定の年齢を超えてくると条件が厳しくなっていく為、不合格の同僚もチラホラ出てくるものとなっています。

航空無線通信士

この免許を取得しない限り、飛行機に装備された無線の操作や、管制官とのやりとりを実施することができません。

日本の空では、殆どの空港で管制官とのやりとりが必要となります。

アメリカでは芝生で飛行機を離陸させ、農薬散布を行なったりすることもありますが、日本ではそのような事はなく基本的に管理された空港から空に向けて飛び立つ事となるでしょう。

その為日本の空では実質的に必須の免許となっています。

航空英語能力証明

航空法 第三十三条
定期運送用操縦士、事業用操縦士、自家用操縦士又は准定期運送用操縦士の資格についての技能証明(当該技能証明について限定をされた航空機の種類が国土交通省令で定める航空機の種類であるものに限る。)を有する者は、その航空業務に従事するのに必要な航空に関する英語(以下「航空英語」という。)に関する知識及び能力を有することについて国土交通大臣が行う航空英語能力証明を受けていなければ、本邦内の地点と本邦外の地点との間における航行その他の国土交通省令で定める航行を行つてはならない。

出典:e-Govポータル

これは外国の空を飛行する場合に必要な免許となっています。

つまり、国内線のみを飛行する場合や、趣味で飛行する場合は必須ではありません。

そのため、航空会社によっては取得する必要がない航空会社もあります。

これは必要な申請書を提出し、面接を受けることで1日で取得可能となっています。

合格のためには、英会話をある程度支障なく行えるある程度の英語力は必須です。

その他免許

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その他、一部のパイロットが有する免許をご紹介します。

必ずしも全員が持っているわけではありません。

機長認定

航空法 第七十二条
航空運送事業の用に供する国土交通省令で定める航空機には、航空機の機長として必要な国土交通省令で定める知識及び能力を有することについて国土交通大臣の認定を受けた者でなければ、機長として乗り組んではならない。

出典:e-Govポータル

分かりやすくいうと、エアラインの比較的大きい飛行機を機長として飛行する場合に必要となるものです。

比較的大きい、といっても「国内ほぼ全てのエアラインで使用している飛行機」が該当します。

なお。パイロットが取得する中でも最も厳しいものです。

これは大型機の機長として必要な知識と能力があることの認定を受けなければならず、更に一年ごとの更新制です。

一年毎に不合格になる可能性があり、これに不合格になると多くのエアラインでは機長として飛行することができません。

気象予報士

気象予報士は必須ではありませんが、パイロットの中では所持する人が比較的多い資格となります。

気象予報士で求める方向性と、パイロットに求められる知識の方向性は大きく異なりますが、天気の本質を理解するために趣味も兼ねて取得する人がいます。

飛行機の操縦に必要な免許!パイロットは何の資格を持って飛行している?まとめ

ここまで飛行機の操縦で求められる免許について解説しました。

  • 軸となる免許は自家用操縦士、事業用操縦士、定期運送用操縦士の三つ。
  • 趣味で飛行するならば、自家用操縦士と航空無線通信士、身体検査証明が必要。
  • 国際線のエアラインの機長は、定期運送用操縦士、航空無線通信士、身体検査証明、航空英語能力証明、機長認定を有している。

飛行機事故が発生した場合には、操縦している人だけでなく地上にいる人や物件など、多くのものを巻き込んで大惨事となる可能性があります。その為日本だけでなく世界的に免許を明確に定めており、その目的も目的によって様々で複雑なものとなっています。

このように飛行機の操縦にしっかりと免許などの厳しい制度を設けられていることが、空の安全を守る一端を担っているといえるでしょう。

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