飛行機にエンジントラブルが発生した時皆様ならどうしますか?
やばい!もうだめだ!遺書を書かなきゃ・・・
という人もいれば・・・
珍しいから撮影しなきゃ!あとでみんなに自慢しよう!
という人まで、様々だと思います。
エンジントラブルは飛行中にパイロットが恐れる事態の1つです。
この記事では、飛行機にエンジントラブルが発生した場合のパイロットの対応策や乗客の安全を確保するための手段について、現役機長の空おじが詳しく説明します。
エンジンは一つ止まっても大丈夫!
基本的に、一つのエンジンがトラブルに見舞われた場合でも、自動操縦装置が飛行の制御を簡単に維持できるほど、操縦への影響は少ないです。
パイロットも一生懸命飛行機を飛ばすというよりも、決められた手順を間違えなくこなすことに集中します。
ただし非常に高い高度を飛行していると空気が薄い分、1つのエンジンでは推力を充分に生み出せないため、降下しなければならない時があります。
降下する際には、富士山の2倍の高さ以上の山があるチベット付近を飛行している時は山に衝突する懸念があります。
なお、チベット上空を飛行する際には会社ごとに1つのエンジンになった際の飛行経路が定められている為、それに従います。
また、離陸後低高度でエンジンが故障した場合も、予め設定された山を回避する経路を飛行します。
つまり、1つのエンジンになっただけならば、パイロットがしっかりと手順をこなせば墜落するようなリスクは全くありません。
着陸操作における難しさは、機種によって様々です。
最新機種であれば、通常の着陸にかなり近い感覚で着陸ができます。
なお、飛行機の事故の確率はこちらでまとめています。
エンジントラブルの原因とは?
エンジン故障の種類とその原因について説明します。
エンジンの経年劣化や整備不良
エンジンは1分間に10万回転するような速さで高速回転しています。
そのようなエンジンでは、ネジ一本規格と異なるものを使用しただけで、そのネジが外れた瞬間にエンジンの破壊が発生します。
また、金属疲労で一箇所が壊れた場合、すぐに他の箇所まで巻き込んで一瞬で大きな破壊が発生します。
最近の事例で言えば、ユナイテッド航空328便エンジン事故がありました。
この事故では、エンジンのブレードと呼ばれる回転する部分のパーツが破断していました。
エンジントラブルの事例においては、経年劣化によるエンジンの破壊がかなりの割合を占めています。
燃料の異常
使用燃料は、非常に厳しい基準をもとに管理されています。
しかしキャセイパシフィック航空780便事故では、燃料システムの一部が汚染されており、エンジンのコントロールが効かなくなりました。
パワーを絞りたいのにパワーが出たり、パワーを出したい時にパワーが出なかったり、という状況になってしまった事例です。
このようなトラブルは経年劣化に比べて非常に稀ですが、全くないとも言い切れない所です。
この事例は私が勉強した中で最も恐ろしいものの一つです。
パワーは止まってくれればどうにでもなるのですが、止まらないとなると非常に厄介・・・。
死者を出さなかったパイロットは見事です。
異物の吸い込み
エンジンが異物を吸い込んだ場合、エンジントラブルを引き起こす可能性があります。
特に発生するのは鳥の衝突です。
飛行のエンジンは国の基準によって、鳥が衝突しても壊れないように厳しいテストが行われています。
そのテストの基準では、ニワトリ程度の鳥がぶつかって壊れるエンジンならば合格しません。
一方、大型の鳥、例えば鷹やトンビ、もしかしたらクジャクが滑走路にいて吸い込んだならば、試験の対象外の大きさの鳥なので、エンジンが壊れる可能性があります。
また、複数の鳥に対してもテストが行われていますが、カラスが100匹エンジンに突撃したらエンジンがどうなるかは誰にもわかりません。
では、一体どれくらいの可能性で、エンジンに鳥は衝突するのでしょうか?
以下は国内で鳥に衝突しやすい空港の、鳥衝突件数です。
離着陸1万回あたり全体を平均すると20回程度衝突しています。
つまり平均としては、鳥との衝突の確率は0.2%程度ということがわかります。
そして、その中でもエンジンに衝突する可能性は、14.2%から19%程度となっています。
更に衝突した際に、エンジンが損傷を受ける可能性は39.6%から44.1%です。
つまり一回のフライトあたり、0.01%程度の確率で鳥に衝突し、かつエンジンが損傷を受ける可能性があります。
パイロットなら三年も飛んでいたら大体の人が鳥に衝突します。
私も何度も当たってきました。
コックピットの窓に当たると相当びっくりします・・・。
エンジントラブル時のパイロットの対応策
エンジンが完全に停止した場合の手順ですが、実はパイロットはこの手順は毎年練習しています。
しかも最も厳しい、離陸直後にエンジンが故障したケースを想定して実施しています。
実際にどんなやり取りになるか、ご紹介します。
本当はある程度決められた用語があるのですが、わかりにくいため非常に噛み砕いた書き方にしています。
ビービービー!エンジン故障!
OK、顕著な山もないし、このまま経路に沿って上昇するね。
じゃあ、エンジン停止の手順を実施して下さい。
わかりました!
スラストレバーを最小の位置にして、エンジンのメインスイッチを切って・・・、間違えないように・・・。
手順完了しました、エンジンの破損が大きいようです。
(スラストレバーとはパワーを調整する装置を言います。)
了解、じゃあ早めに近くの空港に降りたほうがよさそうだね。
操縦は全く問題なさそうだよ。
とりあえず10000ftで上昇を止めて、エンジンが停止したから緊急事態の宣言、それに近くの〇〇空港と、××空港の天気を取ってみようか。
わかりました!◯◯空港の方が天候は良さそうですね。
着陸距離も滑走路の長さに対して問題なさそうですし、滑走路の閉鎖情報もありませんでした。
OK、じゃあ管制官に◯◯空港への飛行許可をもらおうか。
といった形で、エンジンが一個停止した場合に業務がかなり忙しくなります。
エンジントラブルは怖くない?
パイロットとしては、いくら練習しているからとはいえ、エンジントラブルは当然怖いです。
エンジンの故障だけで済めばいいですが、他に予期せぬことが発生するかもしれません。
例えばエンジンから火が上がったり、エンジンのパーツが操縦系統を傷つけているかもしれません。
上空では原因をパイロットが解明するのは不可能です。
そのような状況の中我々は、他に何も起きないうちに早めに着陸を実施します。
このようにパイロットは悲観的に考えるのが仕事です。
しかし乗客の皆様はエンジンが故障しても、そこから更に色々壊れて墜落したような事例は世界的にもまず起こっていない、だから大丈夫!という認識で問題ありません。
飛行機エンジントラブルまとめ
ここまで飛行機のエンジンにトラブルがなぜ起きるか、起きたらどうするのかをお伝えしました。
- 飛行機のエンジンは、経年劣化が一番主な原因である。
- 鳥が衝突してエンジンが停止する可能性は限りなく低い。
- パイロットはエンジンにトラブルが発生すると非常に忙しい。
飛行機のエンジントラブルはお客様にとっても我々にとっても非常に怖いものです。
そのような事態に遭遇しても、パイロットは訓練に従ってこの記事の通りに、手順を踏みながらしっかり対処をします。