飛行機は安全な乗り物と呼ばれる一方、飛行機が墜落すると、多くの人が亡くなる可能性があります。
そんな飛行機事故の確率はどのくらいなのでしょうか?
飛行機は何が起こるかわからないし怖い・・・
座席では祈ることしかできないし・・・
私も実はパイロットになるまで飛行機はそこまで得意ではなく、離陸の時はドキドキしていました・・・。
少しでも安心してご利用いただけるよう、現役機長の空おじが飛行機事故の起こる可能性、そして本当に安全な乗り物なのか、わかりやすく皆様にお伝えします。
飛行機事故が起こる確率
ハーバード大学の最新の調査によると、飛行機事故が起こる確率は120万回に1回であり、人が死亡する確率は1100万回に1回です。
それに対して車で自動車事故で死亡する確率は一年で200回に1回です。
年間100回運転すると仮定すると、自動車事故で死亡する確率は2万回に1回となります。
年末ジャンボの大当たり確率が2000万回に1回ですので年末ジャンボに当たるよりも、飛行機に搭乗して事故で死亡する確率が若干程度高いことがわかります。
また、マサチューセッツ工科大学(MIT)も航空事故の確率を調査しています。
その研究を行なっているArnold Barnett教授によると・・・
航空機の事故の確率はどんどん減少している
ネットでは事故が起こる可能性は0.0009%と言われています。
しかし実はその情報は古く、飛行機の安全性が高まってその確率は減少しています。
最新の研究では、現在の事故の確率は0.0009%の更に1/10となっています。
おおよそですが、マサチューセッツ工科大学の研究によると、2008年から2017年の期間と、この数字は1978年から1987年の間を比較すると、航空事故で死亡する人数は1/10に減少しています。
実際に日本で起こった最後の旅客機の死亡事故は、1996年のガルーダ航空の離陸失敗事故まで遡ります。
我々は航空事故に関しては沢山勉強します。
その中でも死亡事故は殆どが30年近く前のものになり、飛行機の安全性が高まっているのが実感できます。
事故は絶対起きないのか?
しかし一方、事故を0にすることは残念ながら不可能です。
ICAOという、世界的な飛行の決まりを作る最も権威のある組織があります。
日本を含め、沢山の国が空の安全を守るためのルールをICAOに従って作成しているほど、世界の空の根幹を担う組織なのですが、ICAO曰く安全の定義とは
これはつまり、安全とは事故が起こる可能性が許容可能な水準に下がっている、ということです。
言い換えれば0ではない、ということになります。
国内においては国土交通省が毎年事故の件数の数値目標を発表し、それに準じて航空会社が安全報告書にて同様に事故の件数の数値目標を発表しています。
この数値目標は令和3年を例にとると、100万時間あたり事故が0.6回とされています。
しかし死亡事故は100万時間あたり0.00回が目標数値であり、パイロットとしては死亡事故を起こさないことが使命です。
車は2万回に1回の運転で死亡事故が発生します。
その中で車で100万時間あたり死亡事故0の目標を立てた場合、達成不可能ですよね。
いかに飛行機の安全の基準が高いか、お分かりいただけますでしょうか?
なぜ飛行機の事故の確率が低いのか?
様々な要因がありますが抽象的に言えば、現場に携わる人たちの努力と、過去の事例から学んでいるからです。
更に国の安全対策の成長や、航空機の進化も大きく関わっています。
といってもイメージしにくいと思いますのでパイロットの立場でしていることを皆様にもわかりやすいように説明します。
いかに気をつけて運航しているか、そのイメージを持っていただけたら嬉しいです!
無理をしない
車でもよく言いますよね。
しかし飛行機の操縦は、車よりもはるかに無理をしません。
あ、黄色信号だけどいけるな!いっちゃえ〜!
なんて運転しているとなることも、あるのではないでしょうか。
正直、車の運転では私もなる時もありますが、飛行機の操縦ではこの発想で操縦をすることは全くありません。
確認に確認を重ねた上で操作、操縦をしています。
更に、そのような発想に人間なりがちなことを把握し、またそのような発想になっている時は副操縦士、機長共に注意することまで行っています。
決まりを守ることは最低条件、更にこのように思考の方法もコントロールして運航しています。
とにかく勉強
パイロットは日々勉強です。
次から次に新しいマニュアルや、試験などの勉強に追われるというのは聞いたことがあると思います。
その中でも安全に直結するのが、過去の事故事例の勉強です。
過去の事故の事例を把握し、自分の航空機だとシステムがどう反応し、結果自分はどう対処する、というところまで落とし込んで勉強します。
またシミュレーターでは殆ど起こりそうのない事例まで徹底的に練習します。
この繰り返しが、事故の確率の減少に多少なりとも働いていると思います。
準備を怠らない
フライトを通じて、一番本気を出すのは実は飛行前の準備です。
飛行前にはそのフライトでリスクとなるものを徹底的に洗い出し、自分の中で許容できる範囲を明確にしています。
車の運転では準備は全くしませんが、飛行機の操縦ではパイロットは出社前から準備を重ねています。
パイロット一人一人がしっかりと準備をして仕事に臨むことで、空の安全は保たれています。
飛行機事故の確率まとめ
ここまで飛行機の事故の確率に関してお伝えしました。
- 飛行機の事故は限りなく低い確率になっている。
- 飛行機の事故の確率は数十年で1/10に低下している。
- 日本で旅客機の死亡事故は20年以上起こっていない。
飛行機の事故の確率と、パイロットの安全のための仕事のイメージに関してイメージを持っていただけましたでしょうか。
皆様が安心して飛行機に搭乗していただければ幸いです。