パイロットは英語力が必要となります。
国内線を飛行する場合は勿論、国際線を飛行する場合にはより高度な英語力が求められます。
英語はどうしても苦手なんだけど、どのくらい勉強すればいいの・・・?
正直あまり自分の英語力には自信がない・・・。
と感じている方もいるかもしれません。
今回はパイロットに必要な英語力を、TOEICや実際に使う英語の例をもとに、国際線、大学のパイロットコース、航空大学校や自社養成に関して現役機長の空おじが詳しく解説します。
パイロットに英語が必要な理由
管制官とのやりとりは基本的に英語で実施するため、英語力が安全飛行のために必要となります。
国内線においては日本語でやりとりすることも必要に応じて可能です。
しかし、国際線においては、飛行機の置かれた状況や、自分たちが管制官に求めることなどを、しっかりと管制官の顔が見えない中、空港によっては雑音の混ざる無線機を使用してやりとりしなければなりません。
実際に、歴史上最も多くの死者を出したテネリフェ空港ジャンボ機衝突事故の事故原因の一つも、管制官との英語力に基づくコミュニケーションエラーがありました。
このようにある一定の英語力がパイロットに求められる事は言うまでもありません。
パイロットの英語力に必要なTOEICのスコアは?
パイロット人生をスタートするための各訓練所は、TOEICのスコアを求めている所があります。
なお、それぞれの進路における詳細及び費用はこちらの記事で紹介しています。
航空大学校
航空大学校では受験にあたり、英語力に関わるものはありません。
私大のパイロットコース
以下、必要な英検、またはTOEIC L&Rのスコアです。
TOEIC L&Rスコア | 英検 | |
東海大学 | 600点 | CSE2050点以上 |
桜美林大学 | 550点 | 2級以上、またはCSE1980点以上 |
崇城大学 | 450点 | 二級以上 |
千葉科学大学 | 450点 | 二級以上 |
法政大学 | 430点 | 準二級以上 |
工学院大学 | 400点 | CSE1800点以上 |
第一工科大学 | 記載なし | 記載なし |
自社養成
私大のパイロットコースに比べて、求められる英語力は高くなります。
TOEIC L&R スコア | |
ANA | 700点以上 |
ANA WINGS | 700点以上 |
JAL | TOEICはありませんが、ケンブリッジ英語検定レベルB2以上が望ましい。(TOEIC800点程度に該当します。) |
スカイマーク | 600点以上 |
ピーチ | 600点以上 |
パイロットの英語力で国際線を飛行するためのレベルは?
国際線に従事する場合には、レベル4以上の航空英語能力証明を有しなければなりません。
レベル4の合格基準は国土交通省ウェブサイトの航空英語能力証明実地試験実施基準に載っていますが、基準が漠然としてわかりにくいと思います。
レベル4においては言葉に詰まってある程度時間がかかっても、言い方を工夫することでなんとか自分の伝えたいことの9割程度を伝えられるくらいのレベルです。
TOEIC L&Rと違いSpeakingとListening能力を試されるので、単純比較はできませんがTOEIC700点もあれば十分にレベル4は合格できます。
800点あればまず落ちることはなく、900点あればレベル4を超える英語能力証明が狙えるかもしれません。
なおレベル4は一回合格することで、3年間国際運航に従事できます。
航空英語能力証明はレベル6まで存在し、レベル5、または6は同じテストで好成績を取ればもらうことができます。
有効期限はレベル5が5年、6は無期限と伸びていきます。
なお、極端に高い英語力は不要のため、国際線を飛行する日本人パイロットのほとんどはレベル4を有しています。
パイロットが仕事中に使う英語とは
突発的な事態を除き、ある程度使用する英語は決まっています。
仕事中に使用する英語の中で、少しだけひねった言い回しを紹介します。
なお便名はsora777便です。
Sora777, runway13, clear for immediate take off.
離陸許可の用語で、この場合は「速やかに離陸しなさい」という意味です。
Sora777, descend 12000 feet at pilot’s discretion.
パイロットの裁量(discretion)、すなわち「降下のタイミングなどは自由に、12000ftまで降下せよ」という意味です。
Sora777, resume own navigation, direct HAWKS.
「自身の航法に戻り、HAWKSに直行せよ」という意味です。
Sora777, maintain visual separation from traffic, cleared for visual approach runway27.
「他の飛行機との目視での間隔を維持した上で、ランウェイ27へのビジュアルアプローチを許可する」という意味です。
Sora777, change your call sign to Osora7 until further advised, due to similar call sign.
「似たコールサインの飛行機がいるため、改めて指示があるまでOsora7にコールサインを変更しなさい」という意味です。
わかりましたか?
難しいと感じたかもしれませんが、これは日常的に聞くので 英語力に関係なく直ぐに慣れます。
私は初期訓練中は、ATCの半分くらいは頭がハテナになりましたが、1ヶ月も訓練すればほとんどわかるようになりました。
ただし国際線で不足の事態が起きたときは、アドリブを効かせる高い英語力が求められます。
パイロットの英語力!国際線と大学や自社養成に必要なTOEICは?まとめ
パイロットの英語力について、国際線、大学のパイロットコース、自社養成に必要な英語力のレベルを解説しました。
- パイロットのスタートにTOEICは、大学のパイロットコースで400点、自社養成では600点が最低ライン。
- TOEIC700点程度の英語力があれば、パイロットで国際線を飛べる英語力。
- 実際にパイロットが国際線で使う基本的な英語は、飛行回数を重ねればすぐわかるようになる。
パイロットにとって英語力は、特に国際線を飛行する場合は切っても切り離せない能力となります。
パイロットを目指すうちに英語力を伸ばしておくことで、一つ勉強の負担が減り、訓練がスムーズに進むようになるかもしれません。
TOEIC700点取得を目標に、積極的に英語を勉強することをおすすめします。