女性でパイロットを目指す方にとっては、パイロットに女性が少ないことで情報もない中、不安に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は現在、パイロットで女性の人は次々に増えている状況であり、どんどん空の世界で活躍しています。
そんな女性パイロットが少ない理由と、これからの見通しを現役機長の空おじが徹底解説します。
パイロットは女性でもなれる?
パイロットは女性でもなれます。
更に言えば、どんどん女性がなる時代がきています。
10年も前は女性パイロットというのは、非常に珍しかったです。
おそらく一社に1人いるかいないかでした。
しかし、現在では女性パイロットがいない会社があったら驚かれるくらいの時代になっています。
パイロットの女性はどれくらいいる?
令和2年度の賃金構造基本統計調査を参照すると、女性は30名と、女性比率が1%でした。
しかし、一年後の令和3年度の賃金構造基本統計調査によると、 女性は140名であり総数は五倍近く、女性比率では5.2%という結果でした。
このように女性パイロットは急速に増えており、今後もよりこの傾向が顕著になると予想されます。
私の周りでもちょうどこれくらいの割合です。
増えてきたとはいえ、まだまだ少数派ですね・・・。
パイロットに女性が少ない理由は?
日本においては、過去のパイロットになるにあたっての身長制限が影響していると考えられます。
実は、2011年までパイロットになる主な方法であった航空大学校では身長163cmを下回る場合には受験資格がありませんでした。
現在女性の平均身長は158cmであることから、163cmの身長制限であるとかなりの割合の女性を排除してきたことがわかります。
しかし2011年を境に身長制限が158cmに緩和されたことと、更に身長制限が一切ない大学パイロットコースのパイロットの供給が増えてきたことから、近年女性パイロットの活躍する機会が増えてきました。
また、上記背景や元々男性が行うイメージの職業であることから、女性が参入しにくかったという背景もあるのではないでしょうか。
女性でもパイロットになれる方法
女性であってもパイロットになるには、男性と同じパイロットになるための自社養成、航空大学校、及び大学のパイロットコースに行くことができます。
女性でパイロットになるメリット
パイロットとして女性で働く場合、様々なメリットがあります。
給料
パイロットは男女の給与差は一切ありません。
国税庁の「令和3年分民間給与実態統計調査」によると、男性の平均年収が約545万円なのに対し、女性の平均年収は約302万円とのことです。
つまり給料の面において国内ではまだまだ男女の格差がある職場もありますが、パイロットの職種では給与において男女で格差をつけることは一切ありません。
機長昇格も全く差別なく純粋に能力が評価されるため、昇給の機会も平等に与えられます。
仕事の評価
給料が男女平等と解説しましたが、女性だからといって仕事の評価が不利になることはまずありません。
パイロットの腕というのは、操縦やコミュニケーション、危機管理を主に測られますが、その点にしっかりと努力と能力があれば平等に評価されます。
あいつは女だからな〜、というような事を言う人も他業種同様、会社によってはいるかもしれません。
ですがパイロットの世界は人間性も重視されますので、そのような人は他業種以上に会社内での要職にはつきません。
ただし、能力が基準に達していなければ女性だから救済される、ということも同様にありませんので注意が必要です。
出産
ワークライフバランスの観点ではパイロットは女性にとって働きにくいイメージがあるのではないでしょうか?
出産に関して言えば、実は長期休暇はそこまでハードルは高くありません。
普通の職場では一時休職は他の人に迷惑をかける心配が出てきますが、パイロットの場合は出産の離脱により人に迷惑をかける心配は他の職種に比べあまり必要ありません。
何故ならパイロットは男女関わらず病気になったら身体検査の要件がフライトができなくなり、ある程度の長期離脱は男性でも充分にあり得るからです。
そして長期離脱もある程度見越して乗員の人数が調整されています。
全く迷惑をかけないということはないですが、実際に脳梗塞や手術などで、年単位で飛行できなくなる人は必ずいるため、長期離脱を見越した規定もしっかりと各航空会社は整備しています。
女性でパイロットになるデメリット
実際に女性で働いている方が感じるデメリットの部分は色々あるかもしれませんが、私が知る女性パイロットから聞くところを解説します。
ワークライフバランス
出産による長期休暇は取りやすいことをお伝えしましたが、訓練中においては長期休暇は取りにくいと言えます。
初期訓練を一年くらい入社後に行いますが、この時期は長期離脱はあまり想定されていません。
機長昇格訓練が始まると、大手では3年程度、大手以外でも1から2年程度は訓練に拘束されます。
この二回は、非常に重い訓練となっていますので、長期の休暇を取得することはハードルが高いという現実があります。
男性で、機長昇格訓練中に病気になってしまう人ももちろんいますが、休みが長期にわたる場合は訓練が中断となり再度やり直しになるケースもあります。
パイロット内では少数派
女性が少数派というのは否めない事実です。
そのため女性パイロットという観点で取材が来ることもあり、まだまだパイロットの女性が目立つ存在なのがわかります。
目立つことがいいことなのか、悪いことなのかは人によって捉え方が変わってくると思います。
評価は平等ですが、失敗も成功も男性よりは若干目立ってしまってしまう可能性があるというところがデメリットとして考えられます。
同期内で気を使われる可能性がある
これも少数派から派生する話ですが、例えば同期の中で女性が少数だと、期によっては非常に気を使われるかもしれません。
パイロットは訓練の際に、同期とうまく協力できるか、というのはかなり訓練成功の鍵を握っています。
実際に私が見てきた中で、同期仲が悪くても訓練を通過する場合はありますが、訓練を通過できなかった期は概ね同期仲がうまくいっていないと思います。
それくらい同期とうまく付き合うこと、本音で喋ってお互いにサポートすることが大切なので、いかに男性社会に溶け込んでいくかという課題は女性の方がより大きくなります。
まとめ
パイロットとして女性が少ない理由及び最新の人数や現場の状況についてまとめました。
- 身長の基準に達していない可能性が大きいと考えられる
- 男性主導の職業としてのイメージがある
航空業界は常に変化を続けており、大学養成の人が多く増えたり、パイロットの女性が増えたり、など目まぐるしく状況が変わっています。
パイロットに女性がなるにあたっては前向きな変化が続いているため、今後も情報を収集し、チャンスを逃さないようにしてください。