自家用操縦士の免許は、空で飛ぶ為の第一歩目のライセンスになります。
日本では、自家用操縦士という免許が非常に珍しく、難易度の想像がなかなかつかない方も多いのではないでしょうか?
自家用操縦士を取得することで、空への大きな第一歩を踏み出すことができます。
この記事では自家用操縦士の試験の難易度について、現役機長の空おじが解説します。
自家用操縦士とは?
自家用操縦士の定義は、航空法別表に定義されており、航空機に乗り組んで、報酬を受けないで、無償の運航を行う航空機の操縦を行うことができる操縦士です。
言い換えると、自分の趣味の範囲で飛行機を飛ばしたり、お金を貰わずに友人や彼女を乗せて飛行機を飛ばすことができる免許になります。
アメリカではセスナでの遊覧飛行や、農薬散布などのために自家用操縦士を取得する人が多いです。
なお万が一、乗せた人からお金をもらってしまったり、エアラインでボーイング737を操縦してしまった場合は免許の業務範囲外になります。
自家用操縦士はパイロットの免許の中でも最も下位に位置します。
その上の免許には、お金を貰って飛行するための事業用操縦士、更に大型機の機長として飛行する為に取得する、定期運送用操縦士があります。
自家用操縦士の難易度
自家用操縦士の難易度ですが、筆記試験である学科試験と飛行機を飛ばして試験する実地試験の二つを行います。
学科試験は難しく、実地訓練は難しくないと私は感じました。
学科試験は合格するだけならば100時間程度、実地試験は訓練所のカリキュラム次第ですが1ヶ月ほどの時間がかかります。
学科試験と実地試験に分けて解説します。
学科試験
自家用操縦士の学科試験の難易度が難しい理由としては、学科試験は今まで学校で勉強をしなかった科目を勉強しなければならないからです。
その為最初に勉強に取り掛かる時の難しさが非常に高いです。
合格するには科目ごとに70%正解する必要があります。
ただしある程度内容を理解すれば、学科試験そのものは過去問から8割程度出題されるため、学科試験の合格を目指す最終的な難易度はそこまで高くありません。
以下が学科試験の科目となります。
- 航空通信 20問:40分
- 航空気象 20問:40分
- 航空工学(飛行船除く)20問:40分
- 航空法規 20問:40分
- 空中航法 20問:40分
試験は四択の中から一問を選択する形になります。
航空通信
航空通信は、管制官とのやりとりを支障なく行う能力の試験となります。
なお、この試験は航空通信士の免許を有していると免除となります。
通信のやりとりの基礎や、管制官の用語の意味、緊急事態の管制とのやりとりの決まり事項などが試験されます。
航空気象
航空気象においては、中学から高校で学習するような気象の基礎的な知識が試されます。
成層圏などの大気の全般的な構成から始まり、前線の構成や、台風の定義など、高校で気象を得意にしてきた人ならば一番簡単かもしれません。
逆にあまり気象を行なってこなかった人にとっては、とっつきが難しい科目かもしれません。
航空工学
航空工学は、飛行機に関する工学の知識が問われます。
つまり、飛行機がどのように飛ぶか、そしてどのように推力が生み出され、どのように使われているか・・・など、専門用語も多く出てくるため、かなり最初は難しい科目となります。
航空法規
航空法、および航空法施行規則の内容から出題されます。
法律はかなりの条数がありますが、自家用操縦士の出題範囲は限られています。
過去問に沿いつつ要点を丸暗記すればいいので、最も難易度は低いと考えられます。
法規は事業用操縦士、定期運送用操縦士においても難易度は低いです。
空中航法
空中航法は、飛行するにあたって速度や針路の原理や、各安全対策についての知識が問われます。
航法計算版という速度や針路を計算するための物を個人で準備しなければなりません。
また、この科目は航法計算版の計算の問題が占める割合が多く、これに慣れない限りは合格はあり得ません。
それ以外の問題は、範囲は非常に狭いので航法計算版をマスターすれば合格はしやすいです。
実地試験
実地試験とは、実際に飛行機を使用して操縦を行い、決められた範囲での飛行が行えているかを試験されます。
この試験に至るまで、車の免許と同様20-30回(訓練所によります)ほど教官と、または1人で試験に向けて練習を行います。
手順のマニュアルをエンジンをかける前からエンジンを落とした後まで丸暗記しなければならないこと、また学科試験の内容も生かして管制などを行わなければなりません。
そしてその中で気づくのですが、手順を覚えてある程度の知識さえあれば、飛行機を飛ばす難易度は非常に簡単です。
ただし適正がこの段階で大きく出るのも事実です。
事業用操縦士を目指すエアライン就職を前提とした訓練過程で行なっている場合、決められた通りに飛ばせないと自家用過程で苦しむ人も一部出てきてしまいます。
ただし、趣味の範囲で飛ばす目的ならば試験まで大きく苦労することはないでしょう。
なお、試験の内容は国土交通省ウェブサイトのこちらに記載があります。
内容をかいつまんで説明すると、離陸や着陸、基本的な旋回動作や、短い経路と長い経路をそれぞれ一人で安全に飛行できるかを試験されます。
確かにこの試験に受からないと、一人で飛ばすことはままならないと思いますが、30回程度訓練すれば十分に達成できる内容となっています。
20人に1人程度は、どうしても適正の問題から飛行機の姿勢を安定させることができず、苦労してしまうかもしれません。
学科試験を乗り越える勉強法
学科試験の対策としては、事業用課程を踏まえて取得するのが、趣味の飛行のみに限られる目的かによって大きく異なります。
自家用操縦士のみの取得の方
最短ルートは、学科試験の内容は過去問が8割なので、過去問を対策すれば合格できます。
最初の一年分の過去問を勉強する間は、全く意味がわからず相当の時間がかかるでしょう。
しかし問題の背景をある程度理解して、何年分もこなしていると、どんどん早くなっていきます。
過去問は国土交通省ウェブサイトのこちらに記載されており、7,8年分も勉強すれば合格できるでしょう。
事業用操縦士およびエアラインを目指す方
過去問だけでは後が苦しくなります。
何故なら知識が非常に限定されてしまい、応用が効かなくなるからです。
過去問をもとにポイントを絞ったら、その問題から派生して事業用に備えて手広くまとめていくと、後が楽になります。
なお工学は学科試験だけでも充分深いので、気象や法規、空中航法の航法計算版以外の問題を深掘りしていくのがお勧めです。
特に気象や法規はエアラインに就職してから、副操縦士の間も非常に重点的に同じ範囲を勉強するため、深掘りすればするほど長期的な目線では必ず自分の力になります。
例えば管制圏で求められる飛行機の装備は何かという問題が出たとします。
それから想像して、他にどんな状況でどんな装備が求められるんだろう?と考えて是非広げてみてください。
この勉強は事業用課程どころか、エアラインの機長昇格まで使える知識を与えてくれます。
まとめ
自家用操縦士の学科試験や実地試験の難易度、更に学科試験のポイントを解説しました。
- 自家用操縦士の難易度は学科試験は高く、実地試験は低い。
- 学科試験の勉強方法は、エアラインを目指す場合はより高みを目指すのがオススメ!
自家用操縦士を目指す方は、まだ空の世界が未知の世界と感じているかと思います。
自家用操縦士の訓練過程ですぐに1人で飛行することになるのですが、その時の景色と足の震えはエアラインの機長になってもまだ忘れられないものがあります。
そのくらい人生の経験としては意義が深いものになりますので、ぜひ挑戦してみてください!