強風が予想される日に飛行機を予約されている方は、飛行機が本当に飛ぶのか不安に思って予約当日を待つ方もいらっしゃると思います。
飛ぶのか飛ばないのかどっちなんだよ・・・。
キャンセルするなら早く教えてくれないと、ホテルの予約とか困るよ・・・。
欠航が決定する時期も、予報の変化に伴いなかなか定まらず、その結果ヤキモキする日が続くかもしれません。
そんな方にどのくらいの風速が欠航の目安となるのか、欠航はいつ決まるのか、現役機長の空おじがわかりやすく解説します。
飛行機の風速の欠航基準
飛行機には、明確に離陸または着陸ができない風速が決まっています。
基本的には出発地において離陸、または目的地において着陸ができない風速が予想される場合、飛行機は欠航になります。
大体の目安としては、以下の気象庁の15m/s-20m/sである、強い風に該当するときは欠航の可能性があります。
風の強さの目安はこんな感じです。
しかし実際は、滑走路の路面状態や機種によって様々に制限される風速が分かれます。
以下、天気ごとに欠航となる風速の基準を徹底解説します。
天気ごとの欠航の風速の基準
風は滑走路の横から吹く風の場合の風速が15ms-19m/sを超える場合欠航の可能性がありますが、そのほかにも気象によって基準となる風速が変わってきます。
台風の風
台風の時においては、滑走路の横から吹く風の場合は15ms-19m/sを超える場合、また風向きを問わず25m/sを超える場合、が欠航の可能性がある目安です。
15m/s-19m/sは飛行機の横風制限に関わるものであり、25m/sは地上係員の安全確保に関わるものになります。
一般的な強風
考えるべき値は台風と同様で、滑走路の横から吹く風の場合は15ms-19m/sを超える場合、また風向きを問わず25m/sを超える場合に欠航する可能性があります。
雪の場合の風
大雪の時滑走路の横からの風が12m/sを超える場合、又は薄く積もる程度の雪の時 15m/s-19m/sを超える場合、が一般的な目安です。
ただし雪の際は、積雪状況により7段階にも8段階にも分かれているため、一概には言えません。
雪の場合滑走路が滑りやすいため、横風制限は精査する必要があり、雪が降っていない時よりも厳しい値を取らなくてはなりません。
飛行機が風が強いと欠航する理由
ここまで風による欠航は横風制限と、地上作業員の安全確保に伴うものが主であることを解説しました。
では、それらは飛行機を何故運航できなくなるするのでしょうか?
飛行機の横風制限
横風制限が定められている理由は、あまりにも滑走路の向きに対して横からの風が強いと、着陸前に低い速度の中で滑走路に真っ直ぐな着陸操作が困難になります。
イメージとしては早い流れの川を、人間が真っ直ぐ渡れなくなるのと同じです。
また、接地の瞬間もギアへの負担が大きくなるということもありますし、横風に煽られて減速中に滑走路から横にはみ出して大事故になる恐れがあります。
飛行機は横風に非常に弱く、制限値は明確に定められています。
実際に横風制限値ギリギリの中で事故になった事例もありました。(wikipediaフェデックス80便着陸失敗事故)
地上作業員の安全確保
風向きを問わず、制限される要素となるのが地上作業員の安全確保です。
理由は単純で、モノが飛び交うほどの風になっているので、地上作業員の安全が確保されないからです。
この値は通常飛行機の横風制限よりも大きい値で定められており、この制限により運航が停止するケースは殆どなく、台風が直撃した場合に限られるのが実態です。
飛行機が欠航するかはいつ決まる?
欠航は関係各部署で決定しますが、どうしても予報の内容によって欠航するタイミングは様々になってしまいます。
その理由について解説します。
明らかに運航ができない場合
明らかに運航ができなければ、出発日から遡って3日程度前に決まることが多いです。
これは低気圧や台風の進路などが、3日後であれば概ね正確に予想されるからです。
逆に極端に欠航を早く決めない理由は、予報が改善されるかもしれず、できる限りお客様を輸送する可能性を探りたいからです。
運航できるかギリギリの場合
運航できる余地があれば、前日21時頃に決定する場合が多いです。
理由としては、風速の予報には航空会社は主にTAF(運航用飛行情報)を使用しています。
このTAFは、一日に四回更新され、21時にその日最後に更新されます。
このTAFは勿論外れることもありますが、運航に利用するにあたって一番精度が高いです。
運航管理者を中心に一日の最後にTAFを見て、その他天気図から総合的に運航可否を決定します。
機長が判断する場合
機長が判断する場合は、残念ながら出発直前になってしまいます。
お客様が空港に向かっている時かもしれませんし、すでに空港で搭乗を待っている時もあります。
場合によっては搭乗された後に欠航する時もあります。
この場合、予め予想されていた天気よりも悪い方に推移している時で、どうしても無理だと判断される場合に機長と運航管理者の話し合いをもって決定されます。
私もこの決定をしたことは何度もありますが、お客様を目の前にして欠航をするというのは苦渋の決断以外の何者でもありません。
私も乗客として空港まで来て飛行機が欠航になったら、穏やかではいられないと思います。
しかしそのようなお客様の気持ちを踏まえてもなお、どうしても飛行することによってお客様をリスクに晒すような気象状態の場合、機長としての直前の判断として欠航となってしまいます。
自分で欠航の可能性を調べるには?
状況によって様々な目安があることはすでに記載した通りです。
その上で大まかに欠航の可能性を調べたい場合は、〇〇空港、風速と調べるとm/sを単位にした風速の天気予報が出てくると思います。
その天気予報で予報されている風速と、上記欠航の目安を比較してみて下さい。
また、更に精度を上げるには横風かどうかも加味しなければなりません。
まず、wikipediaで滑走路の向きを調べてみてください。
例えば、RWY18/36でしたら、180度(真南)及び360度(真北)を向いた滑走路です。
同様に、RWY03/21でしたら、30度及び210度に向いた滑走路となります。
この滑走路の向きに対して、真横から横風制限を超える風が吹いている場合には、当日まで欠航の可能性があります。
ただしあくまで参考程度にお考え下さい。
飛行機が欠航する風速とはどのくらい?飛ばないことが決まるのはいつ?まとめ
この記事では飛行機が風速によって欠航する目安をまとめました。
- 通常、15m/sから19m/sで欠航の可能性がある。
- 欠航の決定の時期は、予報がどのくらい悪いかにより異なる。
- 個人でも、天気予報と欠航の風速を目安をもとに、事前にある程度運航の可能性を調べることができる。
機長を含め、全ての航空会社としてはできる限り運航できる可能性を探しながら運航の可否判断をしています。
なお、風以外でも欠航する原因は様々です。
欠航となった場合、ご迷惑をお掛けして心苦しいですが、飛行機が欠航する風速に基づいた判断が行われている為、ご理解頂けたら幸いです。