パイロットは仕事中、つまり飛行機を空で飛ばしている中、トイレに行くのでしょうか。
トイレに行っている間の操縦はどうしているのでしょう。
パイロット専用のトイレがあるのでしょうか。
今回はそんなパイロットの仕事中のトイレ事情について、現役機長の空おじがお伝えします。
パイロット仕事中にトイレは行く?
パイロットは仕事中にトイレは行くのでしょうか?
勿論トイレに行きます。
機種によりますが、コックピットから近いお客さんが見える位置のトイレに行く場合もあれば、お客さんが見えない位置のトイレに行く場合もあります。
最前列に座って長時間フライトした方は、普通にパイロットがトイレに行くのを目撃した人も多いのではないでしょうか。
パイロットのトイレはどうしてる?
基本的に、忙しい時期に行かなくていいように飛行前、または飛行中の上昇、降下を除いたタスクが少ない時間にサッと行くようにします。
私は飛行前に外部点検という、便ごとに行う外の点検から帰ってきた際に行くのがルーティーン化しています。
そのタイミングでしたらお客様が乗り込む直前だから、丁度いいのです。
国内線のパイロット
国内線は小さい飛行機(エアバス320や、ボーイング737)など、を使用することが多い為、前方のお客様と同様のトイレを使用します。
客室乗務乗務員にカーテンを閉めてもらうなど、ある程度遮蔽をしてもらい、トイレに行くことになります。
また、トイレの周辺を映すカメラや覗き穴、更にはトイレの鍵の使用有無の表示をコックピット内から活用して、お客様が使用していない時にトイレを使用します。
実際には国内線を飛行する場合、トイレに行かないことも多いです。国内線の羽田-福岡間なら2時間前後で終わる為、業務に追われてトイレに行かず到着することも多々あります。
帰りの便も、出発前に行っておくイメージでしょうか。
国際線のパイロット
国際線の場合は大きい飛行機を使用することが多いです。
国内線と同様の航空機を使用する際には、国内線と同じです。
その他大きな航空機の中でも一部では、客室とは別にパイロット用のトイレがある為、そのような機種に乗務する際にはそのトイレを使用します。
実際には飛行時間4時間程度からほとんどのパイロットはトイレに行くのではないでしょうか。
ただ、あまり我慢しても予期せぬ事態が発生した時に、トイレを我慢しながら予期せぬ事態に対処しなくていいように、常に考えています。
戦闘機のパイロット
戦闘機のパイロットの場合、携帯用トイレを持参し、必要に応じてそこで用をたします。
ただし、戦闘機はかなりの速度で不規則なルートを飛ぶため、尿意を感じている暇もないとか・・・
パイロット専用のトイレはある?
殆どの機種でないといっていいと思います。
しかし、パイロット専用のトイレがなくても特に不自由しません。
ただし、客室乗務員にトイレに行く際には遮蔽などしてもらわなければならず、サービス中に行ってしまったりすると嫌われることは、あるあるです。
ちなみに、アメリカでは保安の観点からお客様とは別のトイレを設置する方針となっているそうです。
アメリカで製造しているボーイングの今後の機種はいち早くその流れを汲んでいきそうですね。
アメリカでは旅客機の操縦室ドアを二重化する方針が決定したとのこと。パイロットがトイレに行く場合等、二重ドアで操縦室の侵入を防げます。
安全阻害旅客の増加に伴って二重ドアの要望が高まり、既に二重化されている機体もあります。Image Credit: BEA https://t.co/3aDjOxxQaL pic.twitter.com/MY4aIQAGnH
— TORY (@TORY_biz) June 14, 2023
パイロットがトイレに行くとき操縦は?
操縦はコックピット内で残った操縦士が実施します。
しかし、操縦室を出る際はできるだけ残った操縦士の負荷が高くない時期を選びます。
また操縦室から帰ってきた際には、使用しているオートパイロットの状況や、管制からの指示を残っていた操縦士と必ず共有します。
昔は残ったパイロットが酸素マスクを使うことは義務でしたが、今は義務ではなくなりました。
これは飛行機そのものの信頼性の向上に基づくものだと思われます。
ただし、すぐに酸素マスクを取れる状況になければならず、マスクが入っている蓋の上に物を置くなどは厳禁です。
パイロットがトイレに行ったときのアクシデント
パイロットがトイレに行ったときにアクシデントが起こったことがありました。
事故になった!
2015年、ジャーマンウイングスの精神的に疾患を抱えた副操縦士が、機長がいない間にドアをロックし、そのまま締め出して墜落させました。
コックピット内にはハイジャックなどに備えてドアを閉めるスイッチがあり、それを使用して機長が入れなくしたものです。
通常そのスイッチは、ハイジャックが起きた時に犯人がコックピットに客室乗務員を脅して無理やり侵入しようとするのを防ぐ物です。
副操縦士はそれを悪用し、その結果機長は操縦席に戻れず、搭乗者全員が死亡しました。
お客さんを巻き添いに自殺を図ったものであり、以後国ごとに様々な対策がとられるようになりました。
スイッチを間違えた!
また、詳しい方は2011年に国内某社のドアを開けようとした際に、別のスイッチを触って飛行機がひっくり返りそうになった事例もご存知の方もいるのではないでしょうか。
ラダートリムと呼ばれる、操舵面の一部を操作するスイッチです。
通常はラダートリムは操舵面のバランスが取れる位置にあるのですが、バランスが取れている際に不要に操作した場合には飛行機が横に滑りながらバランスを崩し、どんどん傾いていってしまいます。
そのスイッチをトイレのドアを開けるスイッチと間違えて操作してしまったものでした。
トイレを開けるスイッチとラダートリムの形状は機種によりますが、私の乗務してきた機種ではそこまで似ている物ではありません。
しかし、人間あり得ないようなミスをするものです。
このケースではお客様は殆ど気づかなかったようですが、かなりの傾きとなってしまい相当危険な状態にあったと言えます。
パイロット仕事中にトイレ:まとめ
パイロットは仕事中にトイレは
・路線の長さによって、行ったり行かなかったりします。
・トイレに行くことによって、事故があったこともあります。
・しかし、安全に配慮しながら、安全な時期に、時には安全のためにトイレを利用しています。
空の上では仕事中にトイレを我慢しても安全には直結しません。
時にはコックピットからパイロットが出てきますが、不安に思わず安全のためと思って見守ってくださいね!