飛行機の揺れでパニック!壊れる?どんな対策が取れる?

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空を飛ぶ飛行機は、どうしても気流の影響を受けて揺れることがあります。

中には飛行機の揺れと、閉鎖空間・・・、更には何が起きているか把握できない中で、パニックになりそうになってしまう人もいるのではないでしょうか?

この記事では現役機長の空おじが、飛行機恐怖症で不安な方々に、飛行機の揺れでパニックにならないよう、機長の経験や知識をもとに安心できる情報をお伝えします。

揺れって危険なの?

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お客様が怪我をしてしまう可能性はあり、そういった意味では揺れは危険と言えます。

お客様が転倒し、骨折など大きな怪我をした場合は航空事故になります。

しかしパニックになるような揺れでも、飛行機が壊れる可能性があるかと言われると、ほぼないと断言できます。

揺れで飛行機が壊れた例

1966年まで遡ると、ブリティッシュエアウェイズの航空機が富士山の近くで空中分解をした事例がありました。

富士山の風下の強烈な山岳波を受け、強烈な揺れに襲われた為です。

この飛行機は、富士山のすぐ近くを非常に低高度で有視界飛行方式という飛行方式で飛行しました。

時代が違うのですが、今の時代に「有視界飛行方式」で「富士山の近くを飛行」することは、次の日に仕事を失うのではないかというくらい危険なことです。

現代では厳しいルールによって禁止されています。

なぜなら富士山の風下は、日によっては台風や積乱雲の中で飛行する以上の乱気流があるからです。

逆にこの空中分解に至ったような揺れは、通常の飛行ではまず遭遇しません。

この事例では、現在では考えられない飛行方法をしており、パイロットが職をかけて無茶な飛行をしない限りは空中分解する事はまず考えられません。

どのくらいの揺れで飛行機は壊れるのか

揺れは荷重によって表すことができ、水平飛行している場合には1Gを維持しています。

我々が日常的に遭遇する揺れは、せいぜい1.2G程度の揺れです。

上記の空中分解をしたブリティッシュエアウェイズの事例では、およそ7Gの荷重がかかったとのことです。

一方日常のフライトにおいては、飛行中に歩けないような揺れに遭遇することもありますが、せいぜい1.6G程度です。

この辺りを超えてくると、パニックになるお客様も出てくるかもしれません。

しかし、飛行機は設計上では2Gから2.5G程度はダメージが生まれないようにできています。

更にその1.5倍の荷重でも数秒であればダメージが入らないように、国の基準として定められており、日々遭遇する荷重の強さから考えると、「揺れ」に関しては設計上非常に安全にできていると言えます。

つまり、パニックになるような揺れでも飛行機が壊れる心配は一切不要です。

「飛行機が壊れるかも!?」というようなパニックに陥る必要は一切ありません。

空おじ機長
空おじ機長

例えばですが、現役パイロットで2Gの揺れに遭遇したことがある人を探すのは、相当難しいと思います。

しかしその揺れに遭遇しても、飛行機はすぐに空中分解するわけではありません。

パイロットの揺れに対する考えは?

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揺れは様々な原因で発生します。

時には全く予期しない揺れに遭遇することもあります。

そんな時に我々パイロットは何を考えるのでしょうか?

機長が最も揺れた経験

東南アジアにおける積乱雲の卵に入った時の揺れでした。

インドや東南アジアなど熱帯地方は日本とは比べ物にならない積乱雲が発生します。

そして、その大きさや強さは日本の比ではありません。

積乱雲の壁が200km以上連なっていて、どうしても弱いところを抜けるしかない時に通過した時に、過去一番の揺れに遭遇しました。

きっと何人ものお客様がパニックになった可能性があるレベルでした。

それでもなお整備処置が必要な揺れではありませんでしたが、感覚としては「尋常じゃない揺れだった」という思いでした。

よく国内でも着陸前など地形の影響や台風の風を受けて、お客様から悲鳴が上がるような揺れに遭遇する事はありますが、この経験は全く比較にならないような揺れであり、もっともっと強い揺れは存在しますし、それでもなお飛行機は壊れません。

パイロットの揺れに対する考え方

安心して頂きたいのが、強く揺れたとしても「飛行機が壊れるかも!?」なんて心配するパイロットはまずいません。

むしろ、「お客様が立ち上がっていないか?」を心配します。

航空事故の大部分が揺れによるお客様や客室乗務員の転倒による骨折や、怪我に起因します。

そのため速やかにシートベルトサインを点灯させ、着席を促します。

空おじ機長
空おじ機長

揺れでパイロットが肝を冷やすのは、立ち上がっているお客様がいる時に強い揺れに遭遇した時です。

飛行機が壊れるかどうかで肝は冷やしません。

少しでも揺れないためには?

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いくら飛行機が壊れないといっても、不安な人もいるかもしれません。

そんな時は以下の対策をとることができます。

揺れにくい座席

飛行機の揺れでパニックを心配するお客様なら、翼の横付近の座席が揺れにくいということを聞いたことがある人は多いと思います。

これは本当です。

理論的には翼に重心があるからなのですが、これはどういうことかというと飛行機は公園のシーソーのように揺れの際は動きます。

そんな時、シーソーの真ん中は上下の動きは殆どありませんよね?

逆に一番後ろや一番前は、上下に動くため浮遊感を感じてしまいます。

特に後ろの浮遊感は強く、パイロットの私でもパニックにはなりませんがかなり不快な時があります。

運航でも、後ろの客室乗務員が強い揺れを感じるため、後ろの客室乗務員が熱い飲み物やミールをこぼさないか心配するのが、パイロットの常識です。

飛行機の揺れによりパニックになりそうな方は、是非とも早めに予約して翼付近の座席を指定してみることをおすすめします。

なお、通路側、窓側は殆ど関係ありませんが、窓側の方が閉鎖的な気持ちが少し薄れるかもしれませんね。

揺れにくい時期

冬は雪の雲や、上空のジェット気流の影響を受けて最も揺れやすい季節と個人的には考えています。

一方梅雨前線や秋雨前線のかかっていない春や秋は、あまり揺れません。

上空の風も弱く、かつ大気も大きく乱れない為、最も穏やかな季節です。

ただし、春一番など風の強い日には、空港によって離陸後や着陸前にとんでもなく揺れる事はあります。

一方夏の台風に遭遇する夏は、揺れる日は非常に強く揺れますが、それ以外の日はあまり揺れないことが多いです。

とはいっても必ず揺れない日は存在しませんが、もしも時期を選択する事で少しでも揺れを回避したいならば、秋のフライトがオススメです。

揺れにくい路線

個人的な経験として揺れにくい、揺れやすい路線はあるものの、どうしてもその日の天気や状況によって左右されてしまいます。

その為、路線選択で揺れを避ける事はなかなか難しいですが、この記事を参考にしてみてください。

少しでも恐怖を克服するためには?

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長らく乗務していると、飛行機が揺れた時など恐怖でパニックになるお客様がいるという、客室乗務員からの報告は今まで数えきれないほどありました。

パニックほどではないにせよ、体調不良など軽度なものも含めたら、2ヶ月に1回程度はあるかもしれません。

その時にお客様の様子を確認するのですが、飛行機の恐怖でパニックになる人には、ある程度共通点があります。

以下の点を守っていただいたら、私の経験ではほぼ大ごとになることはないといっていいと思います。

お酒は飲まない

気分が悪くなり、パニックになる人の大部分はこれが原因です。

パニックになることの恐怖、または普段飛行機が怖くない人でもお酒を飲みすぎてしまい、上空で倒れてしまう人は過去多くいます。

上空は酸素が薄い分、お酒が非常に回りやすいです。

日常的に飛行している私でさえ、搭乗前に酒を多く飲んだ場合には飛行中に目が回ってしまい、揺れた場合にはパニックになってしまうかもしれません。

もしも、お酒で恐怖を抑えようと思っている方がいらっしゃったら、逆効果なので絶対にやめてください。

空腹で乗らない

医学的根拠はわかりませんが、私の経験上、空腹で気分が悪くなり、パニックになってしまう人も多くいます。

過去にはドクターコールもしたことがあり、空腹による体調不良というお客様もいらっしゃいました。

しっかりとお腹を満たして、眠くなるくらいの気持ちで搭乗頂いた方が、揺れに対しても精神面上いいのかもしれません。

一人で乗らない

パニックになりやすい方が乗る場合には、お連れ様がいらっしゃるかを必ず確認しています。

それはなぜかと言うと、お連れ様がいらっしゃった方がパニックになっても大ごとになる可能性が少ないのを、我々は経験から知っているからです。

もしも飛行機の揺れでパニックになる心配があるのならば、恐怖を感じた時に心の支えとなってくれるような、身近な人と必ず乗るようにしてください。

我慢しすぎない

怖いけどご迷惑をおかけしたくない・・・、という思いをお持ちの方も多いと思います。

しかしもし揺れによる体調不良からパニックになっている場合、そのようなお客様がいることを知ることで我々もできることがあります。

いきなり、「お客様が倒れました!」という報告が来たらかなり大ごとです。

しかし「体調がすぐれないお客様が・・・」とのことでしたら、高度を下ろして酸素分圧の高い高度を飛行したり、多少燃料を使用してもより揺れない経路を飛行したり、横になってもらったり、と打つ手は沢山あります。

私の経験では、そのようにあらかじめ客室乗務員に相談してくれた人が、その後目的地を変更するほど体調が悪くなった事例は、ほとんどありません。

大体大ごとになるケースは、我慢してしまったとも限りませんが「いきなり倒れてしまった人」です。

パニックになりそうであれば客室乗務員にご報告頂ければ、プロである客室乗務員は必要があるならば操縦室に報告してくれますし、揺れの中でも体調を鑑みて相談していただければと思います。

飛行機の揺れでパニック!壊れる?どんな対策が取れる?まとめ

ここまで飛行機の揺れでパニックになりそうな人向けに、どのくらいの揺れで飛行機が壊れるのか、どのような対策が取れるのかを解説しました。

  • 2G-2.5Gの荷重まで飛行機は保証されており、日常的に遭遇する揺れは1.6G程度である。
  • 揺れにくい座席や揺れにくい時期・路線を選択することで、揺れる可能性を少しでも減らすことができる。
  • 酒や空腹状態は避け、頼れる知り合いと一緒に乗る。

飛行機は空を飛ぶ乗り物ですので、天気には勝てません。

しかし、各々が正しい知識を持ち、対策をとることで、飛行機の揺れでパニックになる可能性を少しでも減らすことができるかもしれません。

機長としては、一人でも多くのお客様が自然の中の飛行を少しでも楽しめるように願っています。

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